「2025年4月の建築基準法改正で、リフォーム費用は本当に上がったの?」と不安を感じていませんか?
建築基準法の改正により、大規模リフォームでは手続きや費用に明確な変化が出ています。
この記事では、改正後のコストの実態や必要な手続き、そしてコンプライアンス時代の失敗しない業者選びを徹底解説します。
正しい知識を持てば、コストアップへの不安は解消され、家族を守る「資産価値の高い家」づくりが実現できます。ぜひ最後まで読んでください。
この記事を書いた人
- 26年間、公務員(県庁)として勤務し、51歳のときに早期退職
- 退職後1年間、フリーランスととして活動し、今は建築関係の民間企業に転職
- 保有資格:一級建築士、宅地建物取引士、FP2級
【結論】2025年の建築基準法改正でリフォーム費用は上がった?

大規模リフォームを行う場合の総費用は、2025年4月の法改正前と比べて増加傾向にあります。
これは、昨今の建築資材の高騰や人件費アップとは別に、建築確認申請の手続きが必要になったことで、調査費用や申請手数料などが新たに発生するようになったからです。
一方で、申請の必要がない「壁紙の張替え」や「設備の交換」「一般的な外壁塗装」といった小規模なリフォームについては、費用や手続きに大きな変更はなくこれまでどおりです。
大規模な「スケルトンリフォーム」や「間取り変更」はコスト増に!
今回の法改正に伴い、2階建ての木造住宅であっても、大規模リフォームを行う際には、建築確認や完了検査が必要となりました。
申請の対象となるのは、建築基準法で「大規模の修繕・模様替え」と呼ばれる、いわゆる「大規模リフォーム」に該当する工事です。
【大規模の修繕・模様替えとは】
主要構造部と言われる「壁、柱、床(最下階の床を除く)、梁、屋根、階段」のいずれか一種以上について、その過半(50%を超える)を改修する工事のことです。
例えば、建物の骨組み(柱や梁)だけを残して内部を一新するスケルトンリフォームや、壁を撤去するような大胆な間取り変更は、「大規模の修繕・模様替え」に該当する可能性が高くなります。
このような工事では、建築基準法に適合させるための調査や図面作成が必要となり、その分のコストが上乗せされます。
屋根や外壁、床の改修が「大規模の修繕・模様替」にあたるのか、判断基準となる国土交通省の資料は以下のようになっています。




確認申請・完了検査の「手数料」と「技術料」で数十万円の負担増
今回の改正で、具体的に負担が増えるのは、大きく分けて以下の2つです。
- 役所や指定確認検査機関へ支払う手数料(実費)
- 建築士へ支払う技術料(設計・申請代行費用)
それぞれの内訳を解説します。
役所や指定確認検査機関へ支払う手数料(実費)
これは、確認申請と完了検査を受けるために、役所(または指定確認検査機関)へ支払わなければならない費用です。
例えば、延べ床面積120㎡の木造2階建て住宅のリフォームで大阪府へ申請すると仮定した場合、その手数料は以下のとおりです。
- 確認申請手数料:50,000円
- 完了検査手数料(中間検査なしの場合):29,000円
合計で約8万円の実費がかかります。
※ これはあくまで手数料の一例です。提出先の市や指定確認検査機関によって異なりますが、概ね数万円〜10万円程度を見ておく必要があります。
建築士へ支払う技術料(設計・申請代行費用)
申請手続きを行うためには、建築士による専門的なサポートが不可欠です。
建物の正確な寸法や状態を確認するための「現況調査」、図面の作成、構造のチェックなど、確認申請を提出するために必要な業務が発生します。
費用の目安としては、住宅の図面がある場合で20万円程度、図面がない場合は30~50万円程度は最低でも見ておく必要があるでしょう。
住宅の大きさや業者によって、費用は変わりますので注意してください。
「壁紙の張替え」や「設備交換だけ」の小規模リフォームは影響なし
小規模なリフォームやメンテナンス工事は、今回の法改正による手続きの変更はありません。申請費用も発生しないため、これまでどおりの予算感で実施可能です。
具体的には、以下のような工事が該当します。
- 水回りの設備交換:キッチン、トイレ、浴室などの設備機器を交換する工事
- 内装材の張替え:壁紙やフローリングの仕上げ材のみを交換する工事
- 部分的な改修:バリアフリー化のための手すりやスロープの設置工事
- 外装のメンテナンス:屋根や外壁の塗装、既存仕上げの上から新しい材料を重ねる「カバー工法」の場合は申請は不要です。なお、外装材のみを全面的に張り替える工事であっても、壁の下地や断熱材まで撤去して作り直さなければ、確認申請は原則、不要とされています。
これらの軽微な改修は、これまでどおり建築確認が不要なため、法改正の影響を受けずにリフォームできます。
以下の国土交通省の資料も参考にしていただければと思います。


何が変わった?「4号特例縮小」と木造住宅リフォームへの影響を解説

今回の改正で最も影響が大きいのが、「4号特例の縮小」と呼ばれるルール変更です。ここでは、これまで適用されていた特例の仕組みと改正によって何がどう変わったのかを解説します。
そもそも「4号特例」とは?なぜ2025年4月に縮小・廃止されたのか
「4号特例」とは、これまで一般的な木造2階建て住宅(旧4号建築物)に対して認められていた「審査の簡略化ルール」のことです 。
【改正の背景】
近年、木造住宅でも省エネ設備の設置により建物が重量化し、より厳密な構造安全性の確認が求められるようになりました。また、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた省エネ基準への適合を徹底するため、建築物の審査プロセスが厳格化されました。
【改正前のルール】
4号建築物の場合、「建築士が設計を行う場合に限り、役所による「構造関係規定」などの審査を省略してもよい(建築士に任せる)」という特例がありました。
「新2号建築物」への移行で審査が厳格化!確認申請が必要になるライン
今回の改正により、木造2階建て住宅の区分が「4号建築物」から「新2号建築物」へと変更されました 。
最も大きな変更点は、これまで免除されていた「大規模なリフォーム(大規模の修繕・模様替)」における建築確認申請が義務化された点です 。
これにより、行政や検査機関が図面をチェックするプロセスが追加され、設計や申請にかかるコストの増加や着工までの準備期間(審査期間)が長くなるという変化が生じています。
耐震・断熱リフォームも義務化?省エネ基準適合との関係性
結論から言うと、リフォームにおいて家全体を現在の耐震・断熱基準に適合させる義務まで課されていません。
ただし、「大規模なリフォームを行う部分」については、現行の省エネ基準や耐震基準に適合しているかの審査(確認申請)が必須となります。
適合義務化ではありませんが、審査は必須ということです。
耐震基準に関していうと、リフォームする部分だけで構造計算(安全性の確認)はできないので、結局は家全体の耐震性能を確認することになります。
大規模リフォームの流れはどう変わった?期間と手続きの注意点

これまで木造住宅のリフォームは、契約から着工までの期間が比較的短いのが特徴でした。しかし、法改正後は「大規模リフォーム」の確認申請が義務化されたため、準備期間を長めに見積もっておく必要があります。
ここでは、改正前後の流れの違いと、施主が気をつけるべきポイントを解説します。
確認申請が必要な場合、着工までに「+1.5ヶ月以上」の余裕が必要
最も大きな変化は、着工前のスケジュールです。
法改正前は、プランが固まればすぐに工事を始められましたが、改正後は作成した図面を役所や指定確認検査機関へ提出し、「確認済証」の交付を受けなければ工事に着手できません。
建築士による現況調査や図面作成に約2週間、申請・審査に約1か月は最低かかりますので、余裕をもったスケジュールを組む必要があります。
「来月からすぐに工事してほしい」という要望は通らなくなる可能性が高いので、注意が必要です。
「既存不適格」だと工事範囲が広がる恐れも!リフォーム以外の改修が必要な理由
古い建物のなかには、建築当時は適法に建てられたものの、その後の法改正で今の基準に合わなくなった「既存不適格建築物」というものがあります 。
そのまま住み続けることに問題はありませんが、大規模リフォームをする場合には、原則「建物全体を現在の基準に合わせる」というルールが適用されるため、リフォーム以外の箇所にも工事範囲が広がる可能性があります。
「遡及適用」の原則
建築基準法では、既存不適格建築物で増改築や大規模リフォームを行う場合、原則として「建物全体(リフォームしない部分も含む)を現在の基準に適合させなければならない」と定められています。これを「遡及適用(そきゅうてきよう)」と言います。
しかし、壁紙を張り替えるだけのような小規模なリフォーム工事やメンテナンス工事は対象外です。あくまで、建築確認申請を出すような大きな工事の場合に遡及適用される場合があります。
負担を軽減する「緩和措置」
一方で、施主の過度な負担を避けるために、一定の条件を満たせば現行基準への適合が免除される「緩和措置」が用意されています。
緩和措置が適用できれば、リフォームする箇所だけを現行基準に合わせればよく、リフォームしない箇所は既存不適格のまま(古い基準のまま)でも工事ができます。
緩和が適用されないケースとリスク
問題は、緩和措置を受けられないケースです。
例えば、過去に違法な増築が行われている違反建築物や、検査済証がなく既存不適格建築物であることを証明できない場合などは、緩和が認められない可能性があります。
緩和が認められない場合、リフォームしない箇所も含めて是正工事(補強など)を行わなければなりません。
「リビングだけ直すつもりが、防火基準にあう窓に入れ替えることになった」という事態になり、工事範囲と費用が大幅に広がる可能性があるのです。
予算オーバーを防ぐ!あえて大規模扱いにしない工事範囲の調整
「リフォームはしたいけど、確認申請の費用まで出したくない」。そんなときは、工事範囲をあえて縮小するのも一つの方法です。
そもそも確認申請が必要となる「大規模の修繕・模様替」とは、建築基準法で「主要構造部(壁・柱・床・屋根など)の過半(半分を超える範囲)をやり直すこと」と定義されています。
逆に言えば、この工事範囲を「半分以下」に抑えられれば、確認申請は不要となり、建物全体を現行基準に合わせる義務も発生しません。
例えば、家全体をスケルトン(骨組みだけ)にして作り変えるのではなく、「LDKと水回りだけやって、他の部屋は内装の張り替えだけにする」といったメリハリをつけるやり方です。 どこまでやれば「大規模」になってしまうのかは専門的な判断が必要ですので、建築士と相談しながら、コストを抑えられる最適なプランを考えましょう。
スムーズに大規模リフォームを進めるために準備すべき資料
建築士が現地調査や申請をスムーズに行うためには、新築当時の資料が重要になります。
特に以下の書類が手元にあるか、早めに確認しておきましょう。
【準備しておくべき重要書類リスト】
- 検査済証: 建物が完成した時に、適法に建てられたことを証明する最も重要な書類です 。これがあれば、既存不適格の証明がスムーズに進みます。もし、紛失している場合は、役所で「台帳記載事項証明書」を取得して検査済証が発行されたかどうか確認しましょう。
- 確認済証:工事の前に、設計図書が法令に適合していると認められた証明書です。
- 確認申請図書(設計図書):建築時の図面一式です。これらが残っていれば、新たに図面を復元する手間が省け、設計料(調査費)の節約にもつながります 。
- 工事請負契約書:検査済証や確認済証がない場合に、工事をした時期を特定できる可能性があります。工事時期がわかれば、既存不適格の適用が受けられる可能性が高まります。
【対策】失敗しないために!法改正後の賢いリフォーム会社選び

2025年4月の法改正により、リフォーム会社選びはこれまで以上に重要になりました。
知識のない業者に依頼すると、知らない間に違法建築になるリスクがあるからです。
ここでは、改正法に対応できる信頼できる業者の見極め方や、トラブルを防ぐためのポイントを解説します。
改正法を無視する業者による「違法工事」リスク
法改正の情報を正しく理解していない、あるいは無視する業者には要注意です。
確認申請が必要な工事を適切な手続きをせずに行うと、「違反建築物」になってしまうからです。
「役所に届けると面倒だ」「昔ながらのやり方で大丈夫」と言う業者には、絶対に依頼してはいけません。
将来、家を売却できなくなったり、融資が受けられなくなったりする恐れがあります。法に基づいてきちんと対応できる業者を選ぶことが、大切な資産を守ることにつながります。
安心できる業者の条件とは?建築士の在籍と実績を確認
これからの大規模リフォームでは、建築士が在籍している会社を選ぶことが重要です。
確認申請に必要な図面や構造関係の図書を作成できるのは、建築士だけだからです。
また、多くの工務店は、工事するための「建設業許可」を持っていますが、これだけでは設計や申請業務はできません。「建設業許可」だけではなく「建築士事務所登録」があるかも確認するといいでしょう。
さらに、これまでの実績も重要な判断材料です。 改正前は特例で申請が不要だったため、リフォームの申請実務に不慣れな業者も多いです。
「過去に確認申請を伴うリフォームの実績があるか」「耐震改修などの工事実績が豊富か」を具体的に聞いてみましょう。 設計と施工の両方に精通し、実務経験が豊富なプロがいる会社なら、法改正にもスムーズに対応できます。
リフォーム団体に加盟している業者は比較的おすすめ
信頼できる業者を見極める基準として、業界団体へ加盟していることが挙げられます。
団体に所属している会社は、第三者の視点が入り、法令を守る意識が高い傾向にあるからです。
具体的なメリットは以下のとおりです。
- トラブル相談窓口がある: 工事の不具合などで揉めた際に、加盟団体が第三者として相談に乗ってくれる場合があります。
- 技術や知識のアップデート: 定期的な研修や指導を行っているケースが多く、法改正への対応も早い印象です。
- 倫理規定と指導: 独自に倫理規定を設けていることがあり、不適切な対応があった場合、団体から業者へ指導が入るなど自浄作用が期待できます。
ただし、加盟していれば「絶対に安心」とは限りません。中には活動実態が少ない団体もあります。 あくまで判断材料の一つとして、その団体の活動内容やホームページもあわせて確認してみてください。
1社だけで決めない!「複数社の提案と見積もり比較」は必要
リフォームを検討する際は、必ず複数社から見積もりを取り、提案内容を比較しましょう。
というのも、今回の改正により、申請費用や調査費用などの諸経費が会社によって大きく異なる可能性があるからです。
申請費用が含まれているか、リフォームの提案が具体的かを見比べてみましょう。安さだけで選ぶと、後から追加費用を請求されるリスクがあります。コストを適正に計上している会社を選ぶことが、安全安心のリフォームにつながります。
まとめ
2025年4月の法改正により、大規模リフォームには確認申請が必須となり、費用や全体工期への影響は避けられません。
しかし、これは見方を変えれば、曖昧だった安全性が公的に証明され、大切な資産価値が守られるということでもあります。
正確な現況調査とコンプライアンス意識が高い業者選びが何より重要です。まずは複数の会社に相談し、提案内容をじっくり比較検討することから始めてみましょう。
